ご挨拶の代わりに
春休み中のある朝、応接間のゴミ箱の中身を手で選り分けていました。うみ(無期限預かり中のマゴ。小3女子)にゴミの分別を覚えさせるにはどうしたものか、と考えながら。そんな時、指先が、ティッシュに包まれた、ややずっしりとしたものに触れました。形と重さからして、開く前からわかりました。
私がにぎったおにぎりでした。「YouTubeを観ながら食べたい」と言われて私が作っておいたものと、お弁当の残り。まだあるかと探すと、出てくる出てくる。おにぎりが7つ、お弁当のおかずのウィンナーとカニカマが2本ずつ。全部、ラップを外してティッシュにくるまれていました。丁寧に、隠すように。
私は湧き起こる感情を抑えつつ、それを一つひとつ、テーブルの上に並べました。“犯行”の証拠として(笑)
キッチンで家事をしていると、うみがゴキゲンに起きてきました。テーブルを見たのでしょう。鼻歌がピタリと止まります。それからおそるおそる顔を出して、消え入りそうな声で言いました。
「ばあばごめんなさい…」
「何を謝ってんの」
「おにぎりを残したこと」
「それだけ?」
「…捨てたこと」
「そうだね。でもそれだけじゃない。ティッシュでくるんでバレないようにしたよね。人に嘘をついたり、人を騙したりするような人間になるなよ!」
うみは泣いて謝り、その件はそこで終わり。でも私は、しばらく引きずりました。夫も同じでした。昭和の躾で、食べ物を残したら怒鳴られたり殴られたりして育った私たちにとって、うみが食べ物を残すだけでもイライラするのに、隠して捨てていたこと、「騙していた」ことのショックが、思いのほか深く刺さりました。
けれども、兆候はありました。うみはもともと少食で、白米があまり好きではない。冷えたご飯はなおさらです。そして極めつけ、1週間ほど前の連絡帳には、はっきりこう書いてありました。「毎日おにぎりはあきます」と。イラッとしつつも笑って、「王様かオマエは」と、スルーしていました。
そして、結果的に私たち全員が傷つきました(笑)
なぜ私はおにぎりを作り続けたのか。「便秘がちだから、パンよりもご飯」という思い。「母親から子どもを預かっているのだから、食事はきちんと」という義務感。「残さず食べるべき」という親からの教え。私にとってはすべて、「正しいこと」でした。でも、それがうみに「騙す」ことを選ばせたのかなと思います。思い返せば、自分が子どもの頃、朝ごはんはいつもメロンパンでした。
翌日から、菓子パンをダイニングで食べることにしました。それだけ。
考えてみたら、私自身、「できないこと」だらけのダメ人間です。そんな私の「できない」を、周りが見捨てずに待ったり、できるように考えたりしてきてくれたからこそ、今日もこうして楽しく生きていられる。だから私も、誰かの「できるようになる日」を気長に待ったり、応援できる人間でありたいと思います。
まだまだ成長中の55歳ですが、引き続きよろしくお願いします。
2026年5月5日
Chance!!編集長 三宅晶子
