代表挨拶

 連日ニュースで報じられる犯罪の加害者に対し、「許しがたい」という怒りを感じることがあります。そんなときほど、「自分はいま、感謝が足りているだろうか」と自分自身に問うようにしています。

 私がいま犯罪をせずに生活できているのは、自分の努力だけでなし得たことではありません。中流家庭に生まれ、両親や祖母の愛情を感じて育ったので、非行に走っても道を大きく踏み外すことはありませんでした。高校や大学にも行かせてもらい、何かあったら相談できる人がつねに周りにいました。つまり、ものすごくラッキーでした。

一般社団法人ヒューマン・コメディ代表 三宅晶子

 多くの非行や犯罪の背景には、貧困や虐待があります。多くの加害者は、被害者でもあるのです。彼らに知的障害や精神障害がある場合も多く、単純に「自業自得」と見なしていい問題ではなく、大きな社会課題です。

 株式会社ヒューマン・コメディでは出所者等の採用支援をしていますが、雇用と住居支援だけではやり直せない人が多くいるのも事実です。環境が変わったからといって、30歳なら30年間、50歳なら50年間で身につけた物事の見方や捉え方・価値観は、急には変わりません。

 また、雇用や支援する側についても、「絶対に再犯をさせない」「自分が相手を変える」「支援してもらっているのだから恩義を感じて変わるべき」ではうまくいかない例をたくさん見てきました。物事の見方や捉え方を「変えるべき」なのは、社会も同じかもしれません。

 そこで、株式会社ヒューマン・コメディを持続させるとともに、少年院・刑務所や社会で、物事の見方や捉え方を変えるための種まきをしていきたい。そのために、多くの方が支援にかかわることのできる場がほしい。そんな思いで、一般社団法人ヒューマン・コメディを創設しました。いま、犯罪をせずに生活できている私たちが、犯罪をした人の理由や背景を想像し、支援することのできるやさしい社会であるといいなと思っています。

2022年3月3日
三宅 晶子