『Chance! !Vol.32冬号』ご挨拶に代えて
カテゴリー:お知らせ,ヒューマン・コメディ
ご挨拶の代わりに
訳あって、7月の終わりからうみ(養女の長女、小2女子)を無期限で預かっています。
54才にして初めての子育て。些細なことでイラッとします。絵の具で遊んで服を汚しまくる。部屋を片付けたらYoutubeを観てもいいと言ったのに、片付けずに観ている。注意をすれば「片付けたけど、ものが全部落ちちゃった」などとウソをつく。
そんな毎日を当初は恐怖にすら感じていましたが、仕事の現場や出張に連れて行くことで一緒に過ごす時間が増え、ようやく彼女がいる生活に慣れてきました。
今回の表紙の取材も、彼女に同行してもらいました。といっても、私の隣で監督イスに座ってYoutubeを観ていただけですが。取材が終わって遊園地に行きたいと言うので、乗り物がたくさんあって選び放題の遊園地へ。チケット売り場の前で私は「元が取れるよう」計算し、1日パスポートを買いました。
ところが、その計算はあっさり裏切られます。入場ゲートをくぐるなり彼女は“しまじろう”のテーマパークへ直行。壁の穴に玉を入れると大きな魚の口から玉が出てくる、という非常にシンプルな遊びを始めました。周りはよちよち歩きの子ばかり、しかもみんなすぐに飽きて他のコーナーに移動して行く中、彼女は延々と壁の中に玉を入れ続けています。1時間が経過。頭の片隅で、払った金額がじわじわ重くなる。ようやく「別のところに行くー」と言ったかと思えば、ブランコに向かって走り出す彼女。「ブランコは公園でタダで乗れるだろ!」という心の声を押し殺しながら、待つことさらに1時間。「ばあばーー!!漕いでーーーーー!!」と叫ぶ彼女に「嫌。自分で漕いで」と、冷たい返事をするばーちゃん。私の小さな器は、「高い金を払ってパスポートを買ったのに、これじゃ元が取れない」という不満でいっぱいでした。
いよいよ文句が出そうになった時、目の前ではしゃぐ彼女を見て考えました。「ここにいる目的は何か?」と。そう。うみを楽しませる。それだけ。親元を離れてばーちゃんちで暮らした期間が、さびしい思い出になってほしくない。できるだけ笑っていてほしい。うみが楽しければなんだっていいんだ。元が取れるかどうかなんてのはこっちの勝手な願望で、私の執着を彼女に押し付けていたことに気づいて、反省しました。
きみと手を繋いで歩くのはいつもうれしいよ。存在してるだけで愛だと思う。無償の愛をくれて、ありがとね。
……とはいえ。昨日、両国国技館で友人・吉田実代(みよ)ちゃんのキックボクシングの試合がありました。「うみも行きたい」と言うので、奮発してアリーナ席(2万5千円)のチケットを2枚買って連れて行ったのに、試合が始まる直前にキミは眠りに落ちた。わかってる。「元」とか考えてる自分が悪い。それでも、やっぱり、イラッとする。
いい歳をしてまだまだ成長途中の私ですが、引き続き、よろしくお願いいたします。
2025年11月3日
Chance!! 編集長 三宅晶子
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